【セルフインタビュー】あさはかな夢みし(藤原顕信編)
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主人公・夢子と藤原顕信(ふじわらの・あきのぶ)の出会いのシーン。出オチ。(1巻)
ーーさて今回は、藤原道長の息子、顕信くんについて伺います。
瀧波:ていうか藤原顕信って、知ってました?
ーーいいえ。
瀧波:知らないですよね。
ーー息子いたんですか?くらいの認識ですね。
瀧波:道長は正室の倫子(りんし)との間に男2女4、側室の明子(めいし)との間に男4女2、あと他に男1なので、息子だけで7人いますね。
ーーめっちゃいますね。すみません。
瀧波:顕信は、明子腹で次男です。
ーーちょっと待ってください、なんですか明子腹って言い方!?
瀧波:あ〜…ちょっと慣れっこになってましたが、変ですよね。
ーー変です。
瀧波:複数の女性に産ませてる場合、この人は倫子腹、この人は明子腹、などと母親の名前に腹をつけて説明することがこの手の話だとよくありまして。
ーーなんかこう、即物的な言い方ですね。だれから産まれてもその人はその人なんだから、そういう説明なくてもよくないですか?
瀧波:でも、どの「腹」から生まれたかで、将来が大きく変わっちゃうんですよ。
ーー…とは?
瀧波:正室の子が一番優遇されるので。道長の子で言うと、明子腹の息子は、倫子腹の息子たちより出世できないんです。
ーーえ〜!つらい!!
瀧波:道長は、倫子と明子をかなり対等に扱っていて、それぞれの住むところに月の半分ずつ通っていたらしいです。でも子供の出世については取り立て方に差をつけていたんです。
ーーじゃあ顕信くんは、出世できない境遇ということ?
瀧波:できないわけじゃないけど、二の次にされる感じ。顕信より年下の、倫子腹の次男のほうが早く出世してましたね。
ーーそれは父親に対していろいろ黒い感情を抱いてしまいそうですね…。
瀧波:そう、その気持ちをこじらせて、露出狂に…
ーーえっ!?史実なんですか?
瀧波:いえ、露出狂は私の創作です。
ーーなんだびっくりした。しかしなぜそんな設定に…
瀧波:ストーリー上、露出狂が必要だったんですよ。
ーーちょっと言ってる意味がわかりませんね。
瀧波:方違え(かたたがえ)の話が描きたくて。こっちの方角は「塞(ふたがり)」といって縁起が悪い、だから違う道を進むしかない、でも露出狂が立ちはだかっていてそっちにも進めない!っていう。
「塞」についての説明(1巻)
ーーなるほど…確かに露出狂が必要ですね。
瀧波:でしょ?まず露出狂ありきで、高貴な身分でヒマで性癖をこじらせそうな複雑な事情がある人はいるかな…っていろいろ調べてみた結果、顕信が適任だったんですよ!
ーー顕信くんも適任にされたくなかったでしょうね!
瀧波:まあ、それはしょうがないってことで…顕信についてはウィキペディアをみてほしいんですけど、
ーーまたすごい丸投げしましたね。
瀧波:まあ、そこに書いてることのだいたいは本編にも書いてるんですが、つまりけっこうドラマティックなことをやらかすんですね。
ーー唐突にやらかしますね。
瀧波:それを読んで、「あっこの子を露出狂にしたら、いつかこのドラマティックストーリーも描けるかもしれない」って思ったんですよ。
ーー結果、3巻で…
瀧波:はい。描けました。これもまた道長と同様、必然的というか運命的というか、このエピソードを描かずしてこの作品は無いというくらい大事なものになりました。
ーー露出狂ありきで選ばれたのに…
瀧波:この作品は、自分だけじゃない別の力が働いて話が決まっていった感じがあります。とてもよい体験をしたと思ってます。
ーー急に漫画家ならこれ一度は言ってみたい系のコメントが飛び出しましたね。
瀧波:そのためのセルフインタビューですからね。
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